局所線形モデルを用いた内部モデル制御系の一設計

摘要

近年，コンピュータ技術の発達により，制御性能の向上を目指して，より高次の保証器を持った制御系の設計法が考えられている。しかし，プロセス制御の現場では典型的な古典制御であるPID制御が広く用いられ，約80%以上利用されている。その理由として，制御系の構造が極めてシンプルであることや，PID制御器のパラメータの物理的意味が明確であることがあげられる。また，操縦者が経験に基づき，良好な応答が得られるパラメータを決定しゃすいことも挙げられる。しかし，多くのプロセスは非線形性や操業条件や周辺環境などによるシステム変動を有しており，固定のPIDパラメータを用いた単純なPID制御器では，望ましい制御応答を得ることは困難である。一方，制御対象をできるだけ詳細な数式で記述し，この制御対象のモデルを制御系の中に組み込むモデル駆動型制御法が提案されている。このモデル駆動型制御法の1つとして，内部モデル制御(IMC)がある。内部モデル制御もPIDと同様に，制御系の構造が簡単であり，さらに，制御対象の不確かさに対しても高いロバスト安定性を有していることが特徴である。しかし，内部モデル制御を非線形システムに適用している例は少なく，たとえば，データベースを用いて平衡点に応じて現在のデータと類似したデータを近傍として取り出して制御を行うデータ駆動型内部モデル制御系が提案されているが,これらの手法は計算処理に膨大な時間を必要とされている。