鉄粉の製法が結合剤を用いない圧粉鉄心の磁気特性に及ぼす影響

摘要

近年，環境負荷の低減のために省エネルギー化や脱炭素化への関心が高まっている。また，技術革新による製品の高性能化も伴い，電磁部品の高効率化，小型化が注目を集めている。モータは電磁部品の消費電力のうち約50%の割合を占めており，その中核部品であるモータコアの低損失化，小型化は最重要課題であるといえる。現在，モータコアは電磁鋼板を積層した構造をとる積層鉄心が主流だが，高周波領域での損失が大きく，形状の自由度が低いという欠点がある。これらの課題を解決し得る積層鉄心に代わる鉄心として，圧粉鉄心が注目されている。圧粉鉄心は，絶縁材と結合剤(バインダー)を被膜した磁性粉末を加圧して成型した構造をとる。粉末毎に絶縁材が被膜されているので電気抵抗が高く，渦電流の発生が大幅に抑制される。従って，渦電流損が支配的となる高周波領域での低損失化が期待される。また，磁気異方性を有さず，ネットシェイプに適しているので，形状の自由度が高く，製造コストの低減や小型化，軽量化が可能となる。しかし，透磁率やヒステリシス損が積層鉄心より劣っているおり，この改善が圧粉鉄心の課題となっている。