適応的局所避難経路の提供による避難誘導

摘要

災害時に迅速な避難を実現するためには，適切な情報を確実に避難者へ伝達する必要がある.特に都市部では地域外から訪れる人も多く，地域の避難場所の情報を知らない可能性が高い.そのような場合，例えば現在主として用いられている防災行政無線では，広範囲に向けて同一の情報を伝達することに向いてはいるが，避難者のいる位置に適した局所的な避難情報を適応的に伝達することには不向きである.本研究では個々の避難者の現在地に合わせた避難情報の伝達手段として，タクシーを情報の発信源として利用した情報の発信を提案し，避難シミュレーションを用いて様々な状況に対する検証を行ってきた.本稿では，地域の災害に対する危険度をハザードマップから取得し，その情報を基に発災後の経過時間に応じた避難先の選択方法を提案する.提案手法の有効性を検証するために，避難シミュレーションにより最寄りの避難先を選択する場合との比較を行った.その結果，避難開始の初動に遅れが生じた場合には，提案手法により津波遭遇率が約5%低減することが確認できた.