河床変動を伴う河川における流速補正係数のリアルタイム設定手法に関する研究

摘要

本論文の著者らは固定設置型流速計を用いた河川流量の自動観測システム（以降，流量自動観測システムと呼ぶ．）の構築に取り組hできた1)．このシステムにおいては流量測定断面を河床形状などに応じて複数の区分断面に分割し，それぞれの区分断面における代表流速を固定設置型流速計により自動で測定し，それを当該区分断面の断面平均流速に変換して，この平均流速に区分断面積を乗じて区分断面通過流量を求め，それらを横断方向に積分して断面通過流量を求める．流量自動観測システムを構築する上で検討が必要な項目として，①固定設置型流速計による代表流速測定手法，②代表流速を断面平均流速に変換する流速補正係数の設定手法，③河積変動の把握手法（河床高の自動計測）がある1)．この3項目に関して著者らはこれまでに具体的な手法について検討してきた．そのうち①に関しては，固定設置型流速計として現時点で最も実用性の高い電波式流速計を用いることを提案した上で，観測の現場における風の状況が電波式流速計による河川表面流速の計測精度に与える影響について議論し，現場において同時に観測した風向・風速データを用いて電波式流速計のデータから風の影響を除去する方法を示した2)．本論文では②に関して，流量自動観測システム内における流速補正係数の具体的な設定手法について議論する．本論文において議論する流速補正係数は河川表面流速に対するものである．