四川省宜賓市の明代の一間裳階付仏殿について:中国西南地方の寺廟建築の研究（６）

摘要

四川省の寺廟建築の遺構については、全国重点文物、同省文物の木造建築を中心に現地調査により70棟程を確認し、その一部を報告してきた。同省は北が陝西・甘粛省、南が貴州・雲南省に接しており、元代以降の遺構には華北地方の寺廟建築の伝統と華南地方の木造技術が認められることを指摘した。本稿では、四川省宜賓市屏山県に残される明代の万寿寺大雄宝殿・観音殿、万寿観正殿を取り上げ、単層一間裳階付仏殿に見られる構造と意匠について、その特徴の一端を探ってみたい。