左官塗仕上げ材における網目状ひび割れの発生に関する基礎的研究

摘要

左官における建物表層の塗仕上げは，手作業のため，様々な不具合が生じやすい。頻繁に生じる不具合には，網目状ひび割れの発生がある。一方，例えば陶芸には，陶器表面に微細なひび割れを作る貫入技法があり，ひび割れを模様の一つとして美的価値を見出している。また，芸術家Andy Goldsworthy 1)は，壁面に網目状ひび割れを意図的に発生させた左官塗仕上げで，建築空間に美的デザイン性を付与している。そこで，著者はこれまで，不具合である網目状ひび割れ発生を，美的価値となる左官塗仕上げ表現の一つとして考え，その技法開発に関する基礎研究をしてきた2,3)。本研究は，網目状ひび割れの模様利用に関する調査と，左官塗仕上げ材として壁土を対象に，網目状ひび割れの発生に関して実験的に検討した。