半揮発性有機化合物（SVOC）の測定法に関する研究その16 床面付着SVOC濃度と床材からの放散速度測定に関する研究

摘要

最近、家庭内ハウスダストに付着している可塑剤、難燃剤、殺虫剤、農薬などに関心が高まっている。デンマークのM. LarssonらはPVC床材を使っている住宅の子供が喘息の発病率が高く、特にPVC床材を使っている部屋が多ければ多いほど子供の喘息発病率が高かったと報告した。ハウスダストの摂取経路は主に経口•経皮と吸入の3つの経路が挙げられている。特に幼児の一日・体重あたりのハウスダスト摂取量が10.3[mg/kg・day]を摂取しているとの報告があり、ハウスダストの経口摂取による摂取するDEHP量を推定している。しかし、日本と韓国住宅におけるハウスダスト中SVOC濃度に関する研究では、対象住宅ごとに単位面積当たりのハウスダストの量や捕集面積が異なるため、単純にハウスダスト摂取量によってリスクを評価するのは難しい。また、ハウスダストはバキュームクリーナーを用いて捕集しているが、床面に堆積したダストを全て捕集するのは難しい。ポリ塩化ビニルのように可塑剤や難燃剤が含有されている床材を使う場合、表面に可塑剤などがブリードアウトされ、床面のDEHP濃度が高くなる可能性も考えられる。幼児は床面に直接接触する機会が多く、這い始まった幼児が手のひらに付着したダストやブリードアウトされている可塑剤などを直接なめることによって経口摂取することが多いと考えられる。そこで、本研究では韓国住宅におけるハウスダスト中SVOC濃度と拭き取り法を用いた床面付着SVOC濃度を測定し、床面積当たりのSVOC濃度を比較した。また、室内の気中濃度や対象住宅に施されている床材を収集し、床材からのSVOC放散速度を測定することとした。