建築家の連作における設計主題現代日本の建築家の連作に関する研究 （1）

摘要

建築家は、自身の建築的イメージを具現化する設計活動とともに設計の論理を提示する言説活動を併走させることが多い。建築家の創作活動におけるこのような設計論では、個別の作品に即した一回性の試みの表明のみならず、一連の作品に通底する設計論理が展開されることがある。特に、共通した設計主題のもとで構想される一連の建築作品（以下、連作）においては、そのような一貫した設計論が著されることが多い。そこで本研究では、建築家の連作を題材に、そこでの設計主題とその展開の形式を検討することから、作品の創作を通して展開される建築家の思考の枠組みの一端を明らかにすることを目的とする。ここでは、分析例（図1）のように連作を構成する作品の解説文および論説から、連作において共通した設計主題である連作主題と、連作をどのように展開し、構成したのかという展開形式を読み取ることで、連作における建築家の思考の枠組みを検討する。まず本編では連作主題の内容を、つづく後編では展開形式を位置づけ、分析するとともに、連作主題との関連を検討する。なお、ここでは、共通した主題を明確に読み取ることができる3 作品以上の一連の建築作品（表1,2）を連作と定義し、その解説文を資料としている。