宝厳寺観音堂

摘要

琵琶湖に浮かぶ竹生島に位置する宝厳寺は、西国観音霊場の札所として著名である。古来より神仏習合が著しく、本稿で扱う観音堂は、神仏分離まで隣接する都久夫須麻神社に属していた。この観音堂は、慶長に再興された際、既存の堂に対して、豊国神社に関連する建物の部材を利用して修造されたものと考えられている1)。しかし、側廻りの彫刻に関する論考はあるが、再興時の改造については、部分的な指摘に留まり、これまで十分に考察されたことはない。本稿は、観音堂に残された改造痕跡と前身観音堂を示す古図を検証することにより、現在の観音堂を改めて評価することにしたい。