本覚寺の森 観音霊園•観音堂

摘要

谷戸に建つ寺院の拡張計両である。新しい家族像に応じた小規模な法要の場と樹木葬や永代供養墓を中心とした整備を行つた。 計画上のテーマはランドスケープの修復と親しみのある生活景の創出である。敷地はもともと,緩やかな傾斜地であつたが,一部 に急激な高低差が存在し,周囲との連続性を損なっていた。これを解消し,つなぐように三角形平面の観音堂を配置し,その周りをめぐる緩やかな地形の起伏の中に墓地を配置した。森に接するやや急勾配のエリアは「森の墓地」住宅地に接するエリアは「庭の墓地」として特徴付けをし,それぞれに小さな居場所を配置することで,風景に親しむ視点場を創出している。地形に沿う一枚の大屋根は,諸空間を優しく包み込む象徴であると同時に,優しい日陰と心地よい風をもたらす環境装置でもある。相互依存の木架構は,これに温かく力強い信仰の空間性を与えている。横浜特有の環境単位とも言える谷戸は,元来生活と自然が調和した場であり,寺院は長らくその核として地域を見守ってきた。建築,造 園，墓石を統合したこの計画によって,新しい時代に応えつつ未長く親しまれ愛される境内やとなればと願っている。