暑熱環境における発汗蒸泄機能と人体エクセルギー収支に関する実験研究

摘要

季節や昼夜を通じて変動する屋外温熱環境の人体への負荷を軽減するために、建築躯体に断熱・遮熱を施したり空調設備により室内温湿度を調整したりする。恒温動物であるヒトは、周囲の温熱環境の変化があっても体温を37°C程度に保つ調整機能を持つ。例えば暑熱環境下では、発汗とその蒸発により熱を排出し体温が上がらないように調節する。ヒトの環境適応能力を考慮すると、日頃よく曝されている温熱環境と同様の環境で人は快適だと感じる傾向があると言われている1)。また、いわゆる暑熱順化は発汗量を必要最小限にして脱水を回避するような生得的な機能であるとの指摘もある2)。以上のことから、日頃どのような温熱環境に曝されているかが発汗蒸泄機能と温熱快適性とに影響していると考えられる。本研究では被験者の日ごろの暴露温熱環境の計測と、同一の非冷房空間における発汗量の計測を行なうことで、発汗蒸泄機能と日の暴露温熱環境の関係を調べるとともに、発汗が不可避でしかも非定常な環境における温熱快適性を人体エクセルギー収支によってどの程度説明できるか試みた。