弘前藩「御家中屋舗建家図」の付箋が示す武家住宅の二階部について

摘要

本研究は、宝暦期の弘前城下町の武家住宅を悉皆的に記録する津軽家文書「御家中屋舗建家図」（弘前市立弘前図書館所蔵）に関するものである。この御家中屋舗建家図（以下、「建家図」と略す）は武家住宅の配置や平面を記録する千件を超える膨大さ、そして部屋名や建具類、畳数を記載した仕様の詳細さ、宝暦期という江戸時代中期にたどる成立年代の古さを兼ね備えた高い史料的価値をもつ。それゆえ周知のとおり、佐藤巧、草野和夫、平井聖、羽深久夫など数多くの近世住宅史研究が蓄積されてきた。これら既往研究では社会階層とその規模・間取りの関係や歴史的進展、平面の統計的な抽出、住宅遺構の年代判定の根拠等、広範な視座からこの絵図が分析される。