旧東宮御所（迎賓館赤坂離宮）造営事業における石材調達の実態: 日本近代における建材としての石材利用の展開に関する研究（1）

摘要

近代の日本においては、建築の外装材としての石材利用の増加1に伴い、石材の調達や加工、施工のための体制の構築が様式建築の建設を通じた日本の都市の近代化に大きな役割を果たしたと考えられる2。旧東宮御所（迎賓館赤坂離宮）は明治期を代表する記念建築である。鉄骨煉瓦造の外観全面に花崗岩を用いたその石工事は、同時代でも類を見ない大規模なものとして注目される。建設に当たっては、明治31年に宮内省に東宮御所御造営局が設置され、内匠寮技師・片山東熊が技監として工事を統括した。東宮御所での使用石材や施工体制については未公開史料が多かった3ため、既往研究4でも詳細が明らかにされていない。本稿では、宮内公文書館所蔵史料を主に分析し、東宮御所5造営における石材調達の実態を明らかにすることを目的とする。