『分離派建築会の作品 第三刊』に見る作品の特徴とその分析( その２)

摘要

大正時代に活躍し、日本での建築芸術の地位を模索した分離派建築会の活動を知るにあたって、現存している資料の中では、全三刊の『分離派建築会の作品』が最もその内容を詳細に書き残している。『分離派建築会の作品』は彼らが1920 年から1928 年にわたって計７回開いた作品展のうち、第１回から第４回までに出展した作品の図録と論稿をまとめた書物であり、第一刊から第三刊までが出版されている。そのうち1924 年に発行された第三刊は分離派建築会第３回展(1923) と第４回展(1924) の２つの展覧会での作品をまとめたものである。掲載作品には、彼らの作品に特徴的な曲面形を持つ彫刻的な作品が見られることをはじめ、構成主義に影響を受けたとみられる作品、高層建築の作品などが存在する。本稿では、この『分離派建築会の作品　第三刊』(1924 岩波書店) について作品と論稿の整理を行い、作品の分析と傾向の分類を行うことを目的とする。2020 年で結成100 年を迎える分離派建築会の足跡を改め、この考察を彼らの活動やそのバックグラウンドをより明確に理解するための足がかりとしていきたい。