籐家具のコスガの沿革・デザイン・技術の概要

摘要

本稿は、近現代日本の建築の中に置かれた籐家具の代表的メーカーの一つである尾張屋／大阪屋・小菅恭太郎商店／株式会社小菅商店／小菅工業株式会社／株式会社コスガ(これらを「コスガ」と略記)の沿革と、同社の籐家具のデザインと技術の概要を記すものである。本研究では、コスガが1957 年から2009 年までに発行した販売業者向け営業用カタログ（総合カタログ）、縮刷版、家具シリーズ別単冊カタログ等における同社の沿革・籐家具についての記述、及び籐家具自体を精査した。古書市場で発見した戦前期の尾張屋、大阪屋・小菅恭太郎商店のカタログに収録された籐製品も精査した。また社史『コスガ百十年の歩み』『コスガ百二十年史』の記述も参照した。合わせて『コスガ会社案内』(1974・76・77 年)の内容も参考にした。さらに『室内』『工芸ニュース』に見られるコスガの籐家具に関する記事を渉猟した。拙稿『戦後日本の木製家具』(家具新聞社2014 年／博士論文2012 年)では、コスガの「戦後期」の「木製」家具のデザイン・技術・流通の特質に関する研究を実施した。しかし本稿は、コスガの「戦前期・戦後期」の「籐製」家具のデザインと技術に特化した研究である。なお、管見の限り、コスガの籐家具の通史は未だ著されていない。