各種の高齢者施設における空間構成による生活様態への影響の横断比較 その３：施設種別を横断してみる居住者の滞在場所の分析

摘要

本稿では介護サービスの異なる高齢者の生活施設を対象に空間構成が居住者の滞在場所に与える影響について検証を行った．各施設種別ですべての空間構成を網羅できていないためデータに偏りがあるものの, 居住者の滞在場所は施設が提供する介護サービス, 空間構成, 居住者の心身の状態に影響を受けることを示した．本稿の知見として, 特に多様な施設種別を横断した分析を行ったことで, 居室タイプにおける廊下型／ホール型の別によって, 要介護度と滞在場所類型の関係に差異があることがわかった点は特筆すべきと考える．今後, 高齢期の住まいと介護を提供する各種の事業は統合や, 施設型でなく事業型での再編（１つの建物のなかで, 複数の事業が混在するあり方や, 同じユニット内に複数の事業利用者が存在するあり方など）も想定される．こうしたとき, 居住者に対してどのような生活スタイルを提供すると想定するかによって,居室と空間構成の関係, 空間構成同士の関係を選択的に計画していく必要はより高まると考える．このような計画資料として, 本稿知見は有効と考える．