カドミゥムによる次世代影響を含めた土壌生態系影響の評価方法の検討

摘要

近年、重金属による土壤汚染が顕在化しているにもかかわらず、未だ土壤環境リスクの定量的な評価手法は確立されていない。本研究では指檫生物として一次生産者である植物に着目し、シロイヌナズナ、カドミゥムを用いて、発芽率、生育阻害、ストレスタンパク発現量などの測定を行い、土壊生態系への影響の評価指標を検討した。カドミゥムを曝露したシロイヌナズナを二世代育成した結果、各世代ごとにカドミゥム曝露による生育阻害が見られた。また、植物体中のカドミウム蓄積量においても曝露濃度に依存した增加傾向が見られたことから、各世代におけるカドミウムの曝露・蓄積による生育への影響が確認された。次世代影響の評価指標としてストレスタンパクの発現量を検討したが、有意な結果は得られなかった。一方、発芽率の測定では髙濃度曝露をした子世代の発芽の遅れが見られ、次世代影響が確認された。このことから、カドミゥムによる親世代からの影響が種子の発芽に大きく関与していると考えられ、次世代影響を含めた生態系への影響を評価する上では、発芽率が50%に達するのに要する時間であるTg50など、発芽率の遅れを示す指標が有効となる可能性が示唆された。