フランク·ロイド·ライトの都市関連3著作における農業思想： アメリカ超越主義の建築·都市観に関する研究· その9

摘要

本稿は19世紀アメリカにおいて広範な影響力をもつたとされる超越主義(Transcendentalism)思想が、アメリカ近代の建築や都市の形成に果たした影謇関係を分析し、ァメリ力建築史·都市史における超越主義の歴史的意義を考究する研究の一部をなすものである。建築家F.L.ライト(Frank Lloyd Wright: 1867-1959)に対する超越主義思想の影響を指摘する論評は数多くみられるが、その影響の具体的な内容については、未だ充分には検討されているとは言い難い。こうした現状を受け、筆者らはライト自身による超越主義者への言及傾向から、超越主義者R.W.エマソン(Ralph Waldo Emerson:1803-1882)については特に"農業"を鍵語とした肯定的言及がみられることを指摘し、エマソンの言説が多数引用されているラィトの都市論『リヴイング·シティ(The Living City)』(1958)にみられる農業思想について考察してきた。