映画の舞台背景としての建築: 映画『軽蔑』におけるマラパルテ邸の分析

摘要

マラパルテ邸(1938-1940)は反ファシスト活動による投獄経験を持ち、自らもシュールレアリストであった施主クルツイオ·マラパルテ(1898-1957)、イタリア合理主義建築の旗手ァダルベルト·リベラ(1903-1963)、そして地元の職人であるァドルフォ·アミトラーノの三人によって構想された建築である。カプリ島の絶壁にひっそりと建つ、この複雑な背景を有した住宅は、ジヤン=リュック.ゴダール(1930-)による映画『軽蔑』(1963.12.公開)の舞台となったことで世界的に有名になった。しかし原作であるアルベルト·モラヴィアの小説『軽蔑』(1954)に表現される「カプリの別茌」はマラパルテ邸とは別のものであり、映画化にあたりこの建築を舞台としたのはゴダールの考えによるものであるのは明らかである。