長周期地震動の距離減衰式に関する検討

摘要

観測された地震動強さを回帰分析して得られる距離減衰式は、制約はあるが地震動強さを簡便に評価できることから、地震防災等の分野で広く活用されている。しかしながら、現在までに提案されている距離減衰式（日本建築学会，2004)は最大加速度や最大速度に関するものが主で、応答スぺクトルに関する提案もあるが、社会的に関心が高まっている長周期地震動に適用できる距離減衰式はこれまでに提案例がない。その大きな理由は長周期地震動が卓越したM7以上の観測記録数が少ないためであり、現在、長周期地震動に関しては3次元モデルを用いた数値解析手法による予測が主流となっている。しかし、その予測結果は震源及び地下構造のモデルに大きく依存するため、経験値との整合性の確認が必要であり、距離減衰式の必要性は依然として高い。一方、2006年8月に気象庁の緊急地震速報の運用が開始され、地震被害を軽減する新たな情報として期待されている。