1950年代の都市不燃化運動の全国的展開に関する基礎的整理

摘要

戦後の都市不燃化運動は都市再開発法のルーツである耐火建築促進法の制定（1952年）に結実したとされ、同時にその先進的なまちづくりの要素についても評価されてきた。拙稿（2006年度建築学会学術講演「沼津本通り防火建築帯について」）でも地方都市の事例をもとに地方や住民といった主体による都市環境整備という観点から都市不燃化運動を再考する必要性を示した。しかし耐火建築促進事業の指定された都市だけでも84に及ぶのに、依然として地方での活動とそれを担った主体については一部を除き明らかになっていない。特に中央で運動を支えた都市不燃化同盟が予算獲得団体の性格を強めていくのに対し、地方での実際の事業の背景には活発で多様な運動の形跡が伺えるにも関わらず、その蓄積は活かされていない。このように「不燃」という概念に端を発した戦後の市街地の改造が高度成長を経て「再開発」に至るまでの試みを振り返ることは、現行体制を相対化し人口減少時代の新たな再開発像を考えるために不可欠の作業だと考える。以上の問題意識に基づき、本研究は全国の都市不燃化運動の主体の多元的な側面とその後の動きを明らかにすることで、特に担い手の観点から運動の全体像に迫るための基礎的な整理を行う。なお本稿では建築や都市計画の観点に立っため消防分野の活動は扱っていない。