『源語図集』の制作と受容:物語を通した19世紀における寝殿造観

摘要

本稿は、江戸後期の国学者により制作され、明治初頭の日本画家が所有した『源語図集』(三重県立斎宮歴史博物館蔵)に着目し、内容、制作· 受容者を検討し、19世紀における古代寝殿造観の一端を考察する。 これまで、近世に制作された源氏物語絵などの古代王朝物語絵に描かれた寝殿造表現に着目した。物語絵に表出された住空問は、17世紀初頭においては同時代における書院造の表現が援用されたが、17世紀後半から特定の絵師工房において復古的な表現がみられる。さらに18世紀後半から19世紀にかけて、ほぼ全ての絵画において、古代学習に基づいた復古的な住空間が表現されるようになる。復古的な寝殿造のイメージが社会に広く浸透し、定着したためといえよう。