岡田信一郎設計建築の家具・室内装飾と梶田恵: 明治生命館の家具を例に

摘要

以上より、創建当初の明治生命館の2階役員フロアに配置されていた家具は、梶田恵がデザインし製作したものと、東京は芝の洋家具製造業者が制作したものであることが分かつた。さらに、そのうち、11点が残存していることが分かつた。これらは、創建当初の明治生命館内部の意匠を示すだけでなく、昭和初期の家具の状況をものとして、近代家具史上、非常に重要なものであると言える。また、今回の調査を通して、明治生命館の所有者であった旧明治生命が接收解除の際に行った建物改修工事で、創建当初の家具の復元を試みていたことが分かつた。これは、すべき事である。しかし、一方で、その当時の修復・復元狀況の記録がないため、今回のように当初の家具を特定る際に、かえって難しくなってしまったことが問題であつた。このことからも、家具をはじめ、カーテンゃ絨毯、照明器具といった建築に付属するものについても建築同樣に報告書の必要性があると感じた。