江戸の大名庭園とその思想

摘要

江戸の大名屋敷には池泉庭園が重要であり、それらは 屋敷のタイプよりも地形や敷地を読み込hでつくられた。 江戸郊外には湧水利用で、地形により御殿から分離した 池泉回遊式庭園があった。湧水の得られない平坦な地形 においてはそれを生かした座鑑賞式庭園もつくられた。 ただ、ここで注目したいのが平坦な地形であっても御殿 から分離した庭園があったことで、江戸郊外のような広 い敷地においては回遊に特化した庭園が必要であった。 このような建築と庭園の関係性は江戸の大名庭園の特徴 の一つと言えよう。反対に、江戸城周辺の上屋敷のよう な庭園にあてられる敷地の割合が小さいところには回遊 式ではなく座鑑賞式の池泉庭園がつくられていた。また、 十八世紀以降、入会地や海岸沿いの埋立地などが屋敷地 として積極的に利用され始めた。さらに江戸郊外には藩 主の趣味趣向が表れた庭園がつくられるようになる。理 想の庭園をつくるための場を探し求めこれまで好まれて こなかった場に新たな価値を見出そうとしたと言えよう。