子どもの貧困と住宅:低所得子育て世帯における居住の不安定性について

摘要

本研究の考察結果より、子育て中の貧困世帯の暮らし は住宅と深く関係していることが明らかになった。所得 が低くても転居が少なく、住宅の安定性を確保できてい る世帯は、仕事?家族が安定し、変化の少ない落ち着い た生活を送ることができていた。このことから、子ども をもつ貧困世帯が子育てを持続するために、「安定した住 宅」が重要な役割を果たしていると言える。 さらに、子どもをもつ貧困世帯における住宅事情は、 政府によってではなく、親?親族の持ち家に救われてい ることが明らかになった。公営住宅を通して住まいの安 定を確保する世帯は一定数存在するが、子育て中の貧困 世帯の母数を考慮すると、ごく一部である。つまり、家 族の援助を受けることが困難な状態にあるのならば、貧 困世帯における生活の困窮度は一層高まると考えられる。 貧困な子育て世帯が親?親族から独立して、暮らしを営 むには、まずは住宅の安定性を確保できる制度が必要で ある。これに関して政府は今後、家族主義のイデオロギ ーを見直し、子どもの貧困の解決に向けて「住宅」に関 する支援を拡充すべきである。