北海道の過疎地域における宗教施設の公共的役割に関する基礎的考察

摘要

過疎地域において、多くの宗教施設が地域社会に対する貢献意欲が高く、公共的役割を担う可能性をもつこと が明らかとなった。但し、急激に過疎が進み運営基盤が 極端に弱まっている宗教施設では公共的役割が担えてい ないことも把握できた。 　本研究の結果から考察される過疎地域における宗教施 設の公共的役割は以下のとおりである。 ①福祉施設の運営、取組数の少ない孤児や犯罪者の受け 入れを行っている宗教施設がみられ、福祉の実質的な担 い手としての役割を果たしている。 ②集会機能を備えており維持管理をする人が確実に存在 するため、公共施設の維持管理が課題である過疎地域に おいて重要な集会施設としての役割を果たしている。 ③安価なサービス提供や利用時間の無制限などの要素か ら、日中に滞在できる施設の少ない過疎地域の住民に とっての貴重な来訪場所としての役割を果たしている。 　一方で、これらの公共的役割を担う上でいくらかの障 害があることも明らかとなった。それは、宗教施設を地 域活動の場として活用することへの住民の抵抗感?法的 制約?住民と宗教施設とのニーズの不一致などである。 克服にあたっては、宗教色が弱いこと、外部協力者が存 在することが施設利用を促していると考えられる。