墜落?転倒に起因する頭部衝撃力に関する基礎的研究（その１ 頭部衝撃荷重とHead Injury Criation の関係）

摘要

我が国では、年間約400件の死亡事故が土木?建築工事現場で発生しており、その主な原因は高所作業中における墜落?転倒事故である。日常生活においても同種の事故が発生しており、その数は近年、交通事故による死亡者数を上回る規模（約7千件）に達している。図１に傷病部位別に墜落災害発生状況（死亡災害）をまとめたものを示す。労働災害統計年報1 )の????によると、死亡事故における主な傷病部位は頭部であり、これを墜落事故に限定すると、その割合は７ ～ ８割に高まる傾向にある。したがって、墜落事故による死亡災害を減少させるためには、頭部保護が不可欠であると考えられる。この点、墜落事故の多い建設現場では、これまで墜落災害防止対策を講じてきた。しかしその対策の中身は、足場?手すり等の設備の設置が主である。つまり墜落の機会を減少させる対策であった。これに対し、自動車衝突安全のような“墜落発生時の安全対策”については、検討がなされてこなかった。そこで本研究は、墜落に対する新しい対策の方向性を模索するため、人体簡略化????による衝撃落下試験を実施し、特にその際頭部に作用する衝撃荷重の概算値とHICの関係、更には頸部回転バネの影響について検討を行った。