ヒト視覚の暗順応特性を考慮した効率的な照明制御法の検討

摘要

人工光源の普及などによる生活環境の変化に伴い、睡眠の量や質は年々低下し、睡眠障害が徐々に社会的課題となりつつある。睡眠障害の原因には、アルコールなどの薬理的原因 (1) のほかに、生活環境に由来する光が考えられる。光を用いた睡眠障害の治療は以前から行われている (2) 一方、予防を目的とする研究は多くない。そこで本研究では、就寝前の光環境を制御することにより眠気を促進させ、睡眠障害を予防する光制御パターンの開発を目指した。具体的には、光変化を知覚されにくく、眠気を誘発し、電力消費を減少させる光制御法として、ヒトの生理機能である暗順応が利用できると考えた。ヒトの視覚に関わる視細胞には、昼間視に働く錐体と薄明視に働く桿体があり、通常の室内の光環境下では主に錐体を使用している。明所から暗所に移動するとまず錐体の感度上昇がおこるが、約7 分程度かけて光感度を暗順応開始前の視感度から約10 倍上昇させる(3)。本研究では、このような錐体の暗順応を考慮した減光パターンを用いて、光量の変化を知覚させず、眠気を誘発すること、そして光量を減少させることにより電力消費を抑えることを期待した。 被験者には、作成した光パターンを体験してもらい、光量変化の知覚については実験中のスイッチボックス操作を記録し、睡眠やリラックス感を誘発するかに関しては、実験後のアンケート回答により集計?分析した。