話者の意図理解に基づく対話応答システムHermes における雑談対話

摘要

コミュニケーションとは、自身の持つ知識を開示し、更なる知識を獲得する場である。近年では、携帯電話やパソコンをコミュニケーションツールとして利用することが増え、機器と対話することを実現する対話システムが提供されている。その筆頭としてApple 社のSiri やNTT ドコモのしゃべってコンシェルがあげられる。これらのシステムの機能は機器操作や簡単な会話に限られており、話し相手になる対話システムの実現には、雑談対話を可能にする機能が求められる。本稿では、雑談対話を可能にするための要件を、継続性のある対話を行うこと、対話の中で新しい話題を展開することと考えた。対話システムにおいて理想のコミュニケーションを実現するためには、発言からユーザの意図を正しく理解し、ユーザの様々な要求に応じることが必要とされているが、既存の研究ではそれらが実現できているとは言い難い。2008 年に原田らによって開発されたEVE[1]は、対話に必要な知識と推論ルールを自然言語のみで記述し、類推によって応答を生成する。EVE の問題点は、知識ベースが小さく、限定された応答生成であることである。さらに原田らは、話し手の意図を理解することで話し手が受け手に何を求めているのかを理解し、ユーザを支援する行為を実行することでユーザの役に立つ対話応答システムHermes[2] を構築している。しかし、Hermes は雑談対話を行えないという問題点を持つ。