近世浄土宗捨世派の本堂について近世仏教の宗統復興運動と建築に関する研究（１）

摘要

近世の仏教界は、江戸幕府の寺院政策により大きな影響を受けた。全国各地の寺院では知行制度により経済的な発展が制約され、本末制度により本山を頂点とする組織が確立され、檀家制度により檀家との結びつきが強まり、宗派ごとに格式、規範、行事などが定められたことで、強固に組織化された教団が形成されることになった。そうした中で、近世の寺院建築は、天台・真言宗、浄土宗、浄土真宗、禅宗、日蓮宗など、各宗派が中世に発生した祖形を基に固有の本堂形式を成立させ、其々に建築的な発展を遂げることになった。