2016 年熊本地震で大破したRC 造渡り廊下の崩壊形および地震応答に関する検討

摘要

熊本地震で大破した渡り廊下について保有水平耐力の算定、地震応答解析を行い、以下の知見を得た。建物A では、慣行のスラブ有効幅を見込んだ場合の崩壊形は柱降伏形であり、実被害も対応していた。この崩壊形への十分な保有水平耐力が見込まれたが、地震応答解析による最大応答変形角は約18%と非常に大きく、倒壊に近い大破に至ったと考えられる。ただし、前震による最大応答変形角も13%と大きくなっており、前震後に目立った損傷が見られなかったこととは対応しなかった。建物B では、慣行のスラブ有効幅を用いた崩壊形は梁降伏形であり、実被害の柱崩壊形と対応しなかった。しかし、スラブ全幅を見込んだ場合、圧縮側1 階柱の柱頭・柱脚にヒンジが形成され、実被害に対応した崩壊形となったことから、慣行の有効幅を超えるスラブの寄与が推察される。また、両崩壊形を仮定した地震応答解析の結果、崩壊形に関わらず、安全変形角を超える変形が生じ、残留変形角と被害調査での残留層間変形角の比較からも、柱降伏型に近かったと考えられる。