伝統的町並みの修景プロセスの実態と課題に関する研究: 川越の一番街商店街の観光地化に着目して

摘要

伝統的町並みへの社会的な関心が高まっているなか、埼玉県川越市の中心部に位置する川越一番街商店街は1971 年の大沢家住宅の文化財指定をきっかけに、1983 年の川越蔵の会註1)、1987 年の川越町並み委員会註2)の発足、さらに1988 年の町づくり規範註3)の制定など活発な運動が展開されてきた。その後1989 年に歴みち事業註4)が開始、1999 年に伝建地区に指定されたことなどを大きな契機として、町並みは大きく変容した(表１)。これらの結果、建築物の修理・修景等が進み、来訪者が1990 年代の約350 万人から約600 万人に増え、商業の活性化に成功した (表２)。しかし、近年はその影響により店舗賃料が上昇し、外部の資本が流入する機会も多くなり、商店街としてのまとまりを形成する商業の規範が失われ、観光地化しつつあることも課題となっている。