MR 流体を用いた回転慣性質量ダンパーによる応答制御: その7 周波数領域におけるスカイフック制御の検討（支持部材剛性を考慮した場合）

摘要

前報1)では，著者らが開発したMR 流体を用いた回転慣性質量ダンパー（以下，「MR 慣性ダンパー」と略す）を用いた免震構造物の応答制御について，周波数領域における伝達関数の観点から，慣性質量および制御則の効果について体系的な整理を行い，スカイフック方式による制御則が免震構造物の床応答加速度を抑制しながら応答変位を低減するのに有効な制御方法であることを示した．しかしながら，前報1)における検討はMR 慣性ダンパーの支持部材剛性を剛（無限大）として考えた場合の結果であり，実際の支持部材剛性は有限の値を持つと考えられる．支持部材剛性について，井上・五十子らは定点理論2)を基本に，回転慣性要素と柔支持部材で支持することにより同調付加振動系を構成し，これにより回転慣性要素との並列機構である粘性減衰要素に効率良くエネルギーを吸収させる制振システムとして，「同調粘性マスダンパー」を提案している3)．本報では， MR 慣性ダンパーの支持部材剛性を考慮したモデル（以下，「直列モデル」と呼ぶ）および前報1)にて検討した支持部材剛性を考慮しないモデル（以下，「並列モデル」と呼ぶ）について，周波数領域における伝達関数の観点から比較検討を行う．