圧電式可変負剛性を用いた片持ちはり型動吸振器の固有振動数の自動調整

摘要

機械は常に小型化や軽量化が進められており，それによって省スペース化や輸送費の削減，燃費の向上など，さまざまな恩恵を得ることができる．いっぽうで，振動は生じやすくなるため，制振技術の重要性が高まっている．また，振動により機械が壊れるだけでなく，振動障害の発生など，人の健康に悪影響を及ぼす問題がある．その対策として，従前より定点理論を利用した受動型の制振方法が用いられてきた．しかし，この方法は周波数応答における主系の最大振幅を最小にすることを目的としており，ランダム加振には適しているが，特定の一つの振動数で加振される場合には反共振型動吸振器の方が有利である．反共振型動吸振器はその固有振動数において主系の振動を完全に抑えることができるが，加振振動数が固有振動数から外れると制振性能が低下し，最悪の場合には共振によって主系の振動が増幅する問題がある．よって，エンジンのように加振振動数が変化する場合は反共振型動吸振器の固有振動数を加振振動数に追従させる必要がある．そこで，動吸振器を構成するばねのばね定数を可変にし，外乱の振動数に合わせて自己の固有振動数を調整するセミアクティブ制御を用いた手法が小松崎らにより提案された．しかし，これらには大型化や奥行き方向にスペースを必要とするといった問題があり，小型化や軽量化を目指した装置への適用は適さないと考えられる．そこで，本研究では，せん断力と曲げモーメントの両方が制振に寄与するため，同質量の並進型の動吸振器より制振性能が高く，かつ比較的小型に設計ができるはり型動吸振器による制振を取り上げる．