集電系ハイブリッドシミュレーションにおける架線のモーダルモデル構築

摘要

電気鉄道の速度向上を図る際には，パンタグラフの架線に対する追随性能を向上することで架線・パンタグラフ間に発生する接触力変動やトロリ線の押上量などの増加を抑制することが重要である．パンタグラフの性能評価を簡易的に行う際にはシミュレーションによる数値実験が用いられる．集電系のシミュレーションは様々な条件を任意に設定でき，比較的低コストで結果を得ることができる長所がある一方で，架線やパンタグラフのモデル化誤差の影響を受けるという短所がある．一方，パンタグラフの性能を評価するための定置試験装置として，鉄道総研が所有するパンタグラフ加振試験装置が挙げられる．この試験装置では，パンタグラフ舟体を上下方向に加振することでパンタグラフの追従性能を評価することが可能であるが，予め定められた加振波形を用いてパンタグラフを加振するため，架線とパンタグラフ間の動的相互作用を考慮した上で集電性能を評価することができない．鉄道総研が所有する集電試験装置は，パンタグラフを搭載した走行台車が最高速度200 km/h で実際の架線下を走行することで架線・パンタグラフ間の動的相互作用を考慮しつつ集電性能を評価することが可能であるが，一定速度で走行可能な区間が70 m 程度であるなどの制約がある．