日本沿岸の表層海水中の溶存態ニッケルの分布

摘要

天然海水中には、自然由来および人間活動由来の ニッケルが溶存態または懸濁粒子態で存在する。天 然海水中に残留した溶存態ニッケルの大部分は溶存 有機物と結合して存在すると考えられる。有機物と 結合したニッケルの水生生物に対する有害影響は小 さく、一方、遊離イオンや無機錯体として存在するニッケル（レーバイルニッケル）は水生生物に対する生物利用性や毒性が大きいと報告されている。ニ ッケルについての水質環境基準の設定のため、水環 境中におけるニッケルの残留状況を把握する必要が ある。本研究では、日本沿岸の海水中に含まれるニッケルをキレート榭脂及びDGTデバイスにより濃 縮し、ICP-MSでニッケルの濃度を定量することに より、全溶存態ニッケル（TD-Ni)及びDGT法で測 定したレーパイルニッケル（LDGT-Ni)の分布を明ら かにすることを目的とした。