毛髪再生医療のためのヘアマイクロゲルの大量調製

摘要

毛髪は，見た目の印象を大きく左右することから，老若男女問わず脱毛症によるQuality of lifeの低下への影響は無視できない。現行の脱毛症治療法には薬剤や自毛植毛があるが，末期脱毛症に対してはその治療効果が限定的であるため，新たな毛髪を生み出せるアブローチが必要である。そこで，画期的な治療法として注目されているのが毛髪再生医療である。この方法では，患者本人の毛包を少数取り出して毛包幹細胞を分離·増殖させた後，移植組織を作製し，再び脱毛部に移植することで毛髪を再生させる。中でも，治療効果を決める一因となる移植組織を，どのように作製するかが非常に重要である。これまでの研究では，毛包の発生プロセスで生じる毛包原基と呼ばれる構造体 を作製することが，マウス実験ではあるが高効率に毛髪再生させるのに有用であることが報告されている。しかし，臨床では患者一人当たり数千個の移植組織が必要であるため，毛包原基の作製プロセスはスケールアップが可能な方法でなければならない。そこで，本研究では，バイオプリンタやマイクロ流体デバイスを用いて細胞包埋マイクロゲルを作製する手法を確立し，コラーゲンゲル収縮により高密度化した移植組織を大量調製する技術を開発した(Fig.1)。