ポーラスマイクロニードルによる経皮フルイデイクス

摘要

皮膚最表面の角層は，厚さ0.01mm程度の薄膜でありながら，異物侵入や過剰な水分蒸散などを防ぐバリアとして生体を保護している。Fig.1に皮膚断面の摸式図を示した。皮膚は大まかに角層·表皮·真皮からなり，上述のように角層のバリア機能は生命維持に直結する。そして近年，奉皮層が体外情報を感知して応答する自律的でイオニックな機能組織であることが指摘され注目を集めている1，2。温度·光·圧力などを感知するための受容体チャネルが表皮細胞に見出され，「皮膚感覚」が科学的に見直されようとしているのである。これらの皮膚機能を理解して，美容·健 康·医療に有益な技術を創出するためには，皮膚イオニクスに親和性のある計測·通電技術が重要である。しかし，角質は電気的な絶縁性が高く，特に直流抵抗値は部位によってMΩのレンジに達する。我々は，多孔質体によるマイクロニードル(ポーラスマイクロニードル)を開発して角層の低侵襲な突破を可能とし，皮膚への直流通電と送液による，経皮フルイディクス工学を推進している(Fig.2)。例えば，①皮膚内のイオン分布(表皮電位)がバリア機能と密接に関連付くことを実証し，バリア機能の低侵襲モニタリングの可能性が示された3-5。②表皮層の直流抵抗値の計測は，むくみ(体水分量)センシングの新手法となった6。③ニードルを塩橋に用いる一括搭載型の電気化学システムは，皮内分子センシングに有効である：7，8。そして，④電気浸透流の発生による高効率な薬剤·ワクチン投与および<<·織液のサンプリングなどが実現している。