食品中のイソホロンの分析

摘要

イソホロン（3，5，5－trimethy1-2－cyclohexene-1－one，以下ISPと略記）はハノカ臭を有する無色の液体で，水溶解度は12g／Lであり，多くの溶媒と混合可能な物質である（Fig．1）．ISPは天然樹脂，合成樹脂，ワノクス，オイル，農薬製剤，塗料および印刷インクなどの溶剤として広く使用されており，合成中間体としても知られている．また，ISPは植物中に存在すると報告されている．ISPの急性毒性はマウス経口LD_(50)が2，200mg／kgである．マウスとラットに対する長期経口毒性試験では，250または500mg／kg／dayの高濃度投与で，腎臓や肝臓に障害を与えると報告されている．米国環境庁は，ISPの慢性経口暴露参照値（RfD：Reference Dose for Chronic Oral Exposure）を0．2mg／kg／day，人で発がんの可能性がある物質（グループC）と評価している．ISPは河川水，地下水，飲料水，工業廃水，工場の空気，フライアッシュなどから検出された報告がある．また，ミシガン湖支流河川の魚から，＜0．02～3．61 ppm検出された報告があるが，一般食品の分析例は報告されていない．そこで，種々の市販食品中のISP汚染を調査した．さらに，ISPによる食品汚染の由来を明らかにする目的で，ISPが検出された食品の容器、包装材の溶出試験を行った．