非局所相互作用を導入した自律分散モデル: 細胞の秩序形成における細胞外マトリックスの役割

摘要

自律分散システムを実現する制御モデルの一つに反応拡散モデルがある．反応拡散モデルは通常，環境からの影響を無視した理想的な状況下で，システムを構成する各要素が局所的に相互作用することを前提としている．しかし，典型的な自律分散システムの一つと考えられる多細胞生物において，近年，物理的構造体を介した非局所相互作用が局所相互作用と同様に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた．そこで，このような非局所相互作用が本質的な役割を果たすと考えられるガン細胞の再分化現象について考察する．そして，この現象のモデル化及びモデルの数理解析を通して，環境としての構造体を介した非局所相互作用を導入した自律分散モデルへの拡張の可能性について検討する．