境界音場制御の原理を用いた指向性スピーカシステムの提案

摘要

境界音場制御の原理によれば，空間内の任意の位置で音圧と粒子速度を制御しインピーダンス0の境界面を作ることができれば，その境界面で音響エネルギーの流れを反射することができる．この原理を応用し音を放射したくない方向にのみ境界面を構成すれば音響エネルギーの流れは境界面のない方向にのみ生じるため指向性をもつスピーカシステムの実現が可能となる．これまで提案されている指向性スピーカでは低域で指向性を形成するためにはアレー長を大きくする必要があった．一方，本システムでは原理的に低い周波数での制御効果が高いため，理論的にはあるアレー長で設計したフィルタを用いて帯域信号の上限周波数を制御することができればシステムの規模を変えることなくそれより低域において指向性を形成することができる．また，制御音源間隔を帯域ごとに変化させることにより制御帯域の全域において比較的平たんな特性を得ることができる．本論文では，システムを設計する際の指針となる基本的な特性と制御の効果を数値計算及び実験により確認した。