グリーン水素製造に向けた水電解技術

摘要

国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の第5次報告書では産業革命以降の地球温暖化を2℃以下とするためには2050年までに人類の活動を起源とするCO2排出量を80、2100年までにカーボンニュートラルを達成することが必要と指摘されてきた1)。EUを中心として、2050年にカーボンニュートラルを達成するための対策として、（1)エネルギー効率の最大化、（2)再エネ導入の最大化、電力の脱炭素化、（3)代替燃料や行動変化を取り込んだ運輸部門の脱炭素化、(4)産業政策と資源循環経済、（5)スマートネットワークインフラ、（6)バイオ経済と吸収源、（7)CO2回収·貯留（CCS)の実施が検討されている2)。日本もカーボンニュートラル達成に向けたグリーン成長戦略を策定して「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、「経済と環境の好循環」につなげるための産業政策を進めている。この中で、水素の供給コストは2030年で30円/Nm~3、2050年に20円/Nm~3を目指している。CO2回収·利用·貯留（CCUS)によりCO2排出を抑えた水素や再エネから製造した水素を クリーン水素と位置付け、その導入量の拡大の導入目標も定められている。ここで、水素の30円/Nm~3を水素の発熱量を12.8 MJ/Nm~3、原油の発熱量を38.2MJ/L、為替レートを110円/USDとして換算すると原油1バレル約130円に相当することからエネルギーの価格としての水素供給コストの目標である20~30円/Nm3を理解することができる。ここで、カーボンニュートラルに資する水素製造は、導入期には化石エネルギーとCCUSを利用したブルー水素から始まると考えられるが、これは過渡的であり最終的には、新たな再生可能電力対応の電解槽で製造したグリ一ン水素となると考えられている。