ヨーロッパでのリヨセル繊維事情

摘要

リヨセルは、木材（主にユーカリ）パルプを、有機溶媒N－メチルモルフォルリン－N－オキサイド（NMMO）に溶解させ湿式紡糸により得られる繊維の総称である。 化学修飾をともなわず天然繊維分子をそのまま生かしているため、一般に精製セルロース繊維と呼ばれる新しいカテゴリーの素材である。 ビスコースレーヨンやポリノジックなど従来の再生セルロース繊維に比べ、洗濯耐久性が高いなどの繊維パフォーマンスが良いばかりでなく、製造プロセスのエネルギー負荷が小さく、使用されるNMMOの99％は回収·再利用されるため、地球に優しいセルロース繊維としてオーストリア国内はもとより、欧州連合（EU）からも評価されている（図1）。 本稿では、リヨセル繊維のヨーロッパにおける開発事情と研究の現状について紹介する。