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摘要

乳がん手術後患者がその治療後にホットフラッシュ（ほてり，のぼせ）を経験する頻度は高い。その原因として，化学療法による卵巢機能低下やLH-RHァゴニスト.タモキシフェン，ァロマターゼ阻害薬などの内分泌療法薬の使用が考えられる。ホットフラッシュに対するホルモン補充療法(hormonereplacement therapy ： HRT)の有用性は議論の余地はなぃが，乳がん手術後患者に対する HRTは『乳癌診療ガイドライン』では「内分泌療法によるホットフラッシュの対策として，ホ ルモン補充療法は行うべきではない（推奨グレードD)」とされている。その根拠として，2008 年に報告されたHABIT Trial (Hormonal Replacement After Breast Cancer-Is it Safe?)が引 用されている。この試験では，無作為前向き試験で447名の乳がん患者を2年間のホルモン治 療群(エストラジオール+ ノルェチステロン酢酸塩）と無治療群に分けて平均4年間の追跡調 査を行っている。ホルモン治療群で221名中39名の再発が観察されたのに比べて，無治療群で は221名中17名であり，ホルモン治療群の再発リスクはハザード比2.4(95信頼区間1.3?4.2) であった。また，Colらのメタアナリシスによれば，ランダム化比較試験では乳癌の既往者 にHRTを行つた場合に再％のリスクがハザード比3.41 (95信頼区間1.59?7.33)であつた。 したがつて，『ホルモン補充療法ガイドライン』においても，現在の乳がんとその既往はHRT の禁忌とされている。いくつかの観察研究ではHRTは乳がんの再発に影響を与えなかったと 報告されており，必要に応じてHRTを考慮する余地はありうるが，少なくとも現状では乳が んの既往を有する症例に対して，ルーチンのHRTは勧められない。