核燃料サイクルを巡る動向と展望：高レベル放射性廃棄物処分の現状と今後－段階的な事業推進における技術的信頼性の向上

摘要

2005年10月に閣議決定された『原子力政策大綱』において，放射性廃棄物の処理·処分は，原子力の研究，開発および利用に関する基盤的活動の強化の一つとして採り上げられている。高レベル放射性廃棄物の最終処分は，100年以上にわたる事業であり（図1），これまでの工学分野では経験のない長期の安全性が求められ，さらには国民および地元地域からの信頼獲得が不可欠であることから，国の法的関与等のもと，計画的かつ確実に進めていくことが必要である。 2000年5月，処分実施主体の設立，費用の確保，3段階の処分地選定手続きなどを定めた「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」（以下「最終処分法」という。 ）が成立し，同法に基づき，2000年10月に最終処分の実施主体として原子力発電環境整備機構（以下，「原環機構」という）が設立されるとともに，2000年度には電気事業者は最終処分のための拠出金の積立を開始した。 現在，最終処分事業の実現に向け，国，原環機構，電気事業者が一体となって，最終処分の候補地選定等に取り組んでいるところである。 以下では，原環機構による地層処分実施に向けた取り組みの現状と推進上の課題および今後の展望を紹介する。