チェビシェフ多項式近似を用いた変分ベイズ法による顕微鏡画像の三次元超解像

摘要

細胞の形態変化やそれに伴う機能の変化をより良く理解するためにin vivoで計測可能な光学顕微鏡が活用される．光学顕微鏡で得られる画像は輝度の二次元画像であるが，ある特定の焦点深度で得られる画像が輝度の二次元画像であっても，焦点深度を変えた複数枚の二次元画像を取得することで，物体の深度情報を得ることができる．しかし，広い視野を計測する必要があったり蛍光分子の褪色などの問題があったりするなどして計測時間が限られている場合，十分な空間分解能をもつ深度画像が得られない問題が生じることがある．本研究では，顕微鏡画像の点広がり関数の情報と，空間的滑らかさなどの細胞に関する事前知識を利用したベイズ推定を行うことで，より分解能の高い深度と輝度の画像を得る超解像法を提案する．点拡がり関数の深度方向の依存性は一般に非線形であり，ベイズ推論を行うにあたって何らかの近似計算を必要とするが，ここでは，点拡がり関数のチェビシェフ多項式による近似と数値積分の利用によって，精度よく事後分布の推定が行えることを示す．人工的な画像を用いたシミュレーション実験によって，焦点深度の異なる複数枚の輝度画像から，観測対象の深度と輝度の超解像画像が得られることを示す．