自動車用風洞と流れの可視化

摘要

2003年はライト兄弟の初飛行百周年という年であり，これを記念してアメリカでは各種の催し物が挙行される．ライト兄弟は彼らの飛行機の空力特性を開発するのに風洞を用いたので，私たち風洞屋の大先輩ということになる．ライト兄弟の風洞のレプリカは筆者の知る限り，スミソニアン航空宇宙博物館（ワシントンD.C.），シアトルの航空博物館（ワシントン州），フォード博物館·グリンフィールドビレッジのライト兄弟の自転車屋（ミシガン州），ライトパターソン航空博物館（オハイオ州）にあり，アメリカ人がどれだけライト兄弟の偉業を誇りに思っているかが推し量れる．ライト兄弟の風洞をみると（図1），流れをつくり出すための軸流フアン（図の手前側），フアンから発生した乱れを沈める整流格子，それに空気力を計るための天秤と，現代の風洞が基本的に持っている機能をすべて備えている．この風洞を使って彼らは抗力が小さくて揚力の大きい（揚抗比の大きい）翼型を見出したのである．