プリズム適応における学習と記憶保持特性に与える重力の影響

摘要

我々の身体運動は地上重力との相互作用のもとで調整されており，重力環境が変化すれば，運動制御の再調整が必要になる．また，運動の学習や記憶保持特性に変調をきたす可能性もある．これまで，微小重力下におけるこうした運動の適応過程については，宇宙飛行士による経験的な内省としての報告はあるが，適応時の学習特性や忘却特性と重力の関係に関する定量的な評価は見あたらない．本研究では，重力環境の変化が運動の学習，忘却特性，ならびに記憶保持に与える影響を評価するため，リーチング動作のプリズム適応実験を，1）座位と仰臥位，2）通常重力と過重力環境下で実施し，比較した．その結果，仰臥位は座位に比べ，過重力下では通常重力下に比べ，学習スピードが速く，記憶保持率が高くなることが示された．