今なぜクリーンディーゼルなのか

摘要

近年ディーゼル車が大きな脚光を浴びてきている．すでに欧州では乗用車の新車登録台数の5割以上がディーゼル車なのに対し，日本では，1％以下とほとんどディーゼル乗用車を見かけない，というぐらいにまでその比率は低下していた．その理由の代表的なものは，ディーゼル排ガスに含まれる有害物質が原因による健康被害とそれによるディーゼルのイメージ悪化と考えられる．排ガス問題は何も日本に限ったことではないが，日本では1970年代光化学スモッグが大きな社会問題となり，NO{sub}x削減に重点を置いた厳しい規制がしかれた．当時の技術ではディーゼルにおけるNO{sub}xとPMのトレードオフの関係を解決することが困難であったため，NO{sub}xを減らしたために黒煙対策が差し置かれたトラックが大量に道路を走るようになった．特に商用車が住宅地にまで入ってこない道路交通システムを都市計画の中で構築してきた欧州に比べ，無計画な一極集中による都市化によってトラックが住宅街を走るような道路交通システムになってしまっている日本では，ディーゼル排ガスによる健康被害を促進させてしまうこととなった．