精度管理における統計的データ解析（2） －づスコアの代替指標，変動の観察－

摘要

前回は，zスコアの誘導とその性質等について述べた．今回は，これを更にすすめてZスコアの正規性（正規分布に従うか）と母数の関係について述べ，更に簡単な数値例で，統計値の挙動が測定値の変動等により，どのように変化するかを確かめることにしよう．まず，zスコアが正規分布に従うかどうかが疑わしい，あるいは理想的な正規分布とはなりそうもないことから，新たな疑問が生まれる．仮に一歩譲って，測定値x_iの分布（そして，それを取得した母集団の分布）が正規分布であるとしよう．このとき，母数を用いた標準化スコアオ＝（x_i－mu）／sigmaと，標本から求めた標準化スコアz_i＝（x_i-x）／sを考えることは実は意味が異なることは既に指摘した．詳細な説明は統計学の専門書に譲るが，ここで重要なこととして，Z声に含まれる母数であり真値であるmu，sigmaはいずれも定数であるが，ろに含まれるx，sは，測定値により変動する値（分布する量）で定数ではない，つまり，たまたま得られた一組の測定値から求めた推定値であるということがある．しかし，一般にはこれら母数mu，sigmaは未知の値であり，やむなくこれの代用値（推定値）としての虎，ざを用いるのである．しかもこのとき，オは正規分布となっても，ろはそうはならない（ちなみに，t_i＝n-（x_i－x）／sとするとt分布となる）．